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大阪高等裁判所 昭和43年(ラ)206号 決定

抗告人 笹原良子(仮名)

神戸地方検察庁検事正

相手方 岡正毅

相手方 笹原実(仮名)

主文

原決定を取り消す。

理由

本件抗告の趣旨およびその理由は、別紙に記載したとおりである。

本訴は、養親亡笹原邦夫と養子笹原実との間の養子縁組無効確認を求めるものであつて、この訴は養親笹原邦夫がその死亡の時に普通裁判籍を有した地の地方裁判所の管轄に専属する(人事訴訟手続法二四条)ものであるから、その普通裁判籍について調べてみるに、亡笹原邦夫の住民票には、住民登録法(昭和二六年法律二一八号)施行前より昭和四二年一一月一四日死亡するまでの間における同人の住所を広島県○○郡○○町大字○○△△△番地の一として記載されているけれども、同人はこの間、大阪市○○○区○○町○丁目○番○○号に亡妻美子(昭和二九年一二月一日婚姻、昭和四二年七月九日死亡)ととも居住し、大阪弁護士会所属の弁護士として、事務所を大阪市○区○○町○○番地○○ビル二階に設けて弁護士の業務に従事し、昭和四二年一一月五日、脳軟化症により神戸市○○区○○町所在の○○○○○サナトリウムに入院し、同所において死亡したものであることが、一件記録によつて認められ、右の事実によると、亡笹原邦夫は、その死亡当時前記大阪市○○○区○○町○丁目○番○○号を生活の本拠としていたものというべく、住民票記載の広島県○○郡○○町には住居所を有していたものとは認められない。そうすると、同人の最後の住所を本件訴状および住民票の記載のみによつて右住民票記載の地に有るものとして、本件を広島地方裁判所に移送することとした原決定は、右のように亡笹原邦夫の普通裁判籍を有した地についての判断を誤り、ひいて専属管轄の規定に違背した違法があるものというべく、その取消しを免れない。なお、抗告人は、原決定の取消した上本件を大阪地方裁判所に移送することの裁判を求める旨申し立てているが、抗告審である当裁判所において、本件を右大阪地方裁判所に移送する決定をすることは相当でないと認める。よつて、原決定を取り消すこととして、主文のように決定する。

(裁判長裁判官 小石寿夫 裁判官 宮崎福二 裁判官 館忠彦)

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